RERはパリ市と郊外を結ぶ鉄道です。現在A線からE線まで5つの路線があります。
僕は前にも書いたように外交史料館へいくときにB線を利用していますが、客層はパリ市内、特にパリ中心部を走るメトロとはずいぶん違います。いわゆる白人はほとんどいません。アフリカ系、マグレブ系、中国系、その他の非白人層がほとんどです。その中には不法移民や一時滞在者もいるかもしれませんが、そういった人以外はフランス人です。
最初に乗るとちょっとびっくりするかもしれません。これがフランス?みたいな
でもこれがフランスの現実なんですよね。この現実を体験することって日本、特に日本の若者に必要なのではないのかなと思いました(体験というほど大げさなものではないかもしれませんが)。
というのはB線の乗客の皆さんは異文化を背景に持っている、それでもフランスで共存することを選んでいる(選ばざるをえないのかもしれませんが)人々です。日本で異文化を背景にもっている人々と交流するのは可能かもしれませんが、誰しもがというわけではないでしょう。むしろ日本は異文化を背景にもつ人々を排除する方向でここまできた(移民の受け入れに消極的なように)のですが、パリに限らず世界の多くの国や大都市では、異文化の混在と接触が日常茶飯事です。ところが日本人が圧倒的多数の社会でのみ育ってきた若者はこういった現実というか日常に接触する機会が少ないわけで、もうそれだけで国際的感覚がずれてしまうような気がします。
そのような人々と接触しなくてもいいじゃないか、そういった人たちが来ることで治安が悪くなっては困る、という意見もあるでしょう。
たしかに治安の問題は重要で、きちんと対応すべきだと思います。でも移民の人々すべてが治安を乱す人々ではないですよね。実際にRER車内では、ちょっとつっぱった風貌の移民系の若者の隣に座ろうとしたら、ちゃんとどいて座らせてくれました(僕は人を怖がらせるような風貌ではないので(笑)、もっともB線は治安の悪いとの評判の路線ではあるのですが、この1年弱の印象として10年ほど前と比べパリは治安がよくなった印象をもちました)。
僕は日本に移民をもっと受け入れろ、ということを言いたいのではありません。若い人たちにそういう世界の現実を知って、ぜひ国際感覚を磨いて欲しい、と思っています。それは、日本の繁栄を求めるのなら、いかに世界の他の国や地域の人々と共存していくかを考えることが重要であるからです。「共存する」、でもこれそう簡単ではないですね。
どうしても日本人であれば、日本を中心に考えがちです。外国との関係も、それが日本にとって利益となるかで判断しがちです。日本にとっての利益とは何なのか、についてはさまざまな意見があると思いますが、自己中心的な視点のみで発想された利益に基づいて判断するようなことをしていたら「共存」なんてとてもできないだろうと僕は考えます。
以前、日本の大学でODAに関する授業をしていたら、学生から日本は財政が危機的状況にあるのに援助をするなんておかしい、との意見がでたことがあります。日本はもうお金がありませんので援助できません、と仮に諸外国に言ったとしましょう、でも日本の街をみてそれを外国の人々に納得させるのは難しいのではないのでしょうか。日本国内でこの不況によって苦しんでいる方々がいるのはわかっていますが、たとえばアフリカから旅行できた人々にそのことをすぐに納得させるような光景があちらこちらでみられる、という状況にはないと思います。また、財政が危機的状況にあるからといって日本が援助もできないような経済的な力しか持っていない国になってしまったとはいえないですよね。日本はもうお金がないから援助できないというのは、一見日本の財政改善に役立つ日本にとって利益となる考えかもしれませんが、外国からみれば、日本は援助もできないような国に落ちぶれたか、と嘲笑され、日本は自分たちのことしか考えていないと批判されるかもしれません。これが日本にとって利益となることなのか、どうでしょうか。もっとも、援助をすること自体が適切かどうか(財政赤字云々の議論はなしで)、という議論はありますが。
さて話をフランスに戻すと、異文化との接触は新しい文化をもたらします。フランスもいつまでも日本で思い描かれている「おフランス」ではもはやありません。それがどこまでメインストリームになるかはわかりませんが、たとえばパリ東部、ヴァンセンヌにある移民史博物館では展示以外にも新しい試みとしての催しを展開しています。
ちょっと長くなりました。今日はこの辺で。