2009年11月14日土曜日

ゴンクール賞とナショナル・アイデンティティ


ゴンクール賞といえばフランスでもっとも権威のある文学賞の一つですね。その受賞者が11月2日に発表され、マリー・ンディアイ(Marie NDIAYE)が受賞しました。ンディアイはセネガル人の父親とフランス人の母親をもち、今回の受賞作Trois femmes puissantes(3人の強い女性たち)もフランスとアフリカを舞台にした作品です。日本ではンディアイさんの受賞に関しては、初の黒人女性が受賞、との見出しで記事が掲載されたようですが、こちらでは黒人女性云々というよりも、ンディアイの発言が物議を醸し出したことが話題となっています。

ンディアイは、8月に雑誌inrocks誌に掲載されたインタビューの中で、サルコジのフランスは「おぞましい(monstrueuse)」といい、自分たち一家がフランスからベルリンに移り住んだのもサルコジが政権をとったことに起因することが多であると発言していました。とりわけナショナル・アイデンティティ担当の閣僚であるベッソンやオルトフーの名前をあげて、再度「おぞましい」と言っていることから、ンディアイがサルコジ政権の進める国家によるナショナル・アイデンティティに違和感をもっていることが伺えます。

ところがンディアイのゴンクール賞受賞後に、与党国民運動連合(UMP)所属の国民議会議員エリック・ラウル(Eric RAOULT)はこの発言を蒸し返して噛みついたのでした。ラウルは、ンディアイの発言を「無礼だ」とし、ゴンクール賞受賞者には「慎む義務(dvoir de reserve」があると主張します。さらにラウルはミッテラン文化相に質問状を送りンディアイの発言への対応を求めます。

このラウルの行動に、ンディアイは悪い冗談だと思ったそうですが、公務員でもない自分に「慎む義務」なんてないと主張します。またゴンクール賞関係者も、そのような義務など存在していないし、これからもない、というような発言しています。(リベラシオン紙2009年11月12日)

ミッテラン文化相は、この問題への関与を拒否して問題の終結をはかります。またコシウスコ・モリゼのような他の閣僚も「作家は自らが望むことを言うべき」と発言し(フィガロ紙2009年11月13日)、政府はこの問題に終止符を打つ方向で動きました。

うーん、よく分からないのはラウルがミッテランに何をして欲しかったのでしょうかね。まあ、ラウルの行動はともかくとして、僕がおもしろいなと思ったことは、物議を醸したンディアイのインタビューの中に、自分は100%フランスの環境で育ったのであり、アフリカ・オリジンであることは、肌の色と名前を除いて、意味を持っていない、と述べていたことです。その彼女が違和感を感じる現政権が進める国家によるナショナル・アイデンティティって、やはりちょっと考えさせられます。また引き続き考えていきたいと思います。

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